日本語支援者養成講座 全5回を終えて
利根町で全5回の
日本語支援者養成講座を担当しました。
講座では、
やさしい日本語や
外国人とのコミュニケーションについて学びました。
しかし、
5回を終えて振り返ると、
この講座で参加者の皆さんと考えていたことは、
いつの間にか「日本語の教え方」だけではなくなっていました。
外国人を受け入れるとはどういうことなのか。
私たちは、どんな地域に住みたいのか。
そして、その地域を誰がつくっていくのか。
毎回、参加者の皆さんに書いていただいた
振り返りを読み返しながら、
この講座で起きていたことを
改めてまとめてみたいと思います。
講座を依頼されたときに考えたこと
現在の利根町では、外国人留学生が急増しています。
その一方で、
生活上のトラブルが起きていることも事実です。
外国人が隣人として暮らすことに、
不安や拒否感を持つ住民もいるかもしれません。
そんな状況の中で、
日本語支援者養成講座を開催する意味は何だろう。
日本語の教え方を伝えるだけで、
本当に地域は変わっていくのだろうか。
そもそも利根町は、
この講座を通して
住民にどのようになってほしいと思っているのか。
講座を作り始める前に、
私はそんなことを考えていました。
第1回|「知ること」から始まった
初回は、
外国人との共生について考えるところから始めました。
グループワークを行うため、
参加者には毎回3〜4人のグループで座ってもらいました。
しかし、
初回の講座前は、
グループの中でほとんど会話がありませんでした。
「利根町の未来」というテーマについて尋ねても、
多くの方が「今は何も見えない」と答えていました。
それぞれが利根町で暮らしていても、
地域の未来について考えたり、
知らない住民同士で語り合ったりする機会は、
普段あまりありません。
講座の振り返りでは、
・自分にとっての当たり前が、相手にとっても当たり前とは限らない
・文化や習慣を知ることが、お互いを理解する第一歩になる
・まずは話してみることが大切
・相手を知ろうとする姿勢が必要
といった気づきが見られました。
「外国人をどう支援するか」を考える前に、
まず相手を知ろうとすること。
第1回は、そんなところから始まりました。
第2回|「伝える」よりも「聴く」
第2回では、
やさしい日本語やコミュニケーションについて考えました。
日本語支援というと、
「どのように分かりやすく話すか」
「どのように教えるか」に意識が向きがちです。
しかし、
参加者の振り返りには、
「聴くこと」についての気づきが多く見られました。
・相手の目を見て最後まで聴く
・相づちや表情もコミュニケーションの一部
・自分は伝えることばかり考えていた
・相手が受け取りやすい形で関わることも大切
日本語を支援することは、
一方的に何かを教えることではありません。
相手が何を伝えたいのかを知ろうとすること。
そして、
言葉だけではなく、
相手そのものに関心を持つこと。
「日本語を教える前に、まず人の話を聴く」
講座のテーマが、
少しずつ「日本語の技術」から
「人との関わり方」へ広がっていきました。
第3回|地域で助け合うということ
講座では、日本語支援だけではなく、
「自助・互助・共助・公助」についても考えました。
すると参加者の視点は、
外国人支援だけではなく、
利根町という地域そのものへ向かっていきました。
振り返りには、
・一人では解決できない問題がある
・近所にどんな人が住んでいるのか知ることが大切
・困ったときに助け合える関係をつくっておきたい
・外国人も含めて、人と人とのつながりを大切にしたい
という声が見られました。
ここで、
講座の問いが少し変わっていったように思います。
「外国人のために何ができるか」から、
「私たちはどんな地域に住みたいのか」へ。
外国人を支援するというテーマを考えることが、
いつの間にか、
自分たちの地域のあり方を考えることにつながっていました。
第4回|「受け入れる地域」を考える
第4回では、
町内会や地域とのつながりについて考えました。
外国人が地域に増えていくことを、
「対応しなければならない問題」として捉えるだけではなく、
どんな人が来ても、
この町に住んでよかったと思える地域をどうつくるか。
そんな視点で話し合いました。
参加者の振り返りには、
「この町に来て、住んで良かったなと思える地域になればいい」
という思いもありました。
外国人との共生を考えることは、外国人だけのためではありません。
高齢者、
子ども、
障害のある人、
地域とのつながりが少ない人。
さまざまな人が暮らす地域で、
誰かを「特別な人」として扱うのではなく、
お互いに顔の見える関係をつくっていく。
参加者の皆さんの視点は、
少しずつそんな地域の姿へと広がっていきました。
第5回|実際に会ってみる
最終回は、外国人ゲストとの交流でした。
それまで4回の講座で考えてきたことを、
実際のコミュニケーションの中で試す時間です。
最初は
「外国人と何を話したらいいのだろう」と
緊張していた参加者もいました。
外国人ゲスト側も、
「日本人と日本語で話す」という状況に
緊張した表情でした。
しかし、
実際に同じテーブルを囲み、
話をしてみると、
そこには「外国人」と「日本人」という関係だけではなく、
一人の人と一人の人との会話が生まれていました。
振り返りには、
・これから積極的に関わっていきたい
・まずはあいさつや声かけから始めたい
・お互いの文化や考え方を尊重したい
・顔の見える関係をつくっていきたい
という声がありました。
そして印象的だったのは、
「支援」という言葉よりも、
・一緒に楽しむ。
・穏やかに関わる。
・まずはあいさつをする。
そんな、
小さくて
日常的な行動が多く語られていたことです。
5回を通して見えてきたこと
毎回の振り返りを読み返してみると、
参加者の皆さんの考えには一つの流れがありました。
知る。
↓
聴く。
↓
助け合う。
↓
地域を考える。
↓
実際に関わる。
最初は、
「日本語をどのように教えるのか」という講座だったはずです。
しかし、
5回を通して
参加者の皆さんが得ていったものは、
日本語の知識や技術だけではありませんでした。
外国人を受け入れることは、
行政や学校だけが考えることではない。
住民一人ひとりの小さな関わり方や意識によって、
地域の雰囲気を変えることができるかもしれない。
そして、
利根町の未来をつくるのは、
自分たち住民なのだ。
そんな気づきが、
この講座の中で少しずつ
生まれていったように思います。
講師として感じたこと
私は前年も、
この利根町で講座を担当しました。
この1年の間に、
社会の中では
外国人に対する排斥的な言葉を目にする機会も増えました。
実際に外国人と接触する機会が少ない人は、
どのようなことを考えているのだろう。
講師である私自身にも、それは見えていない部分でした。
今回、参加者の皆さんの振り返りを
一人ひとり読みながら感じたのは、
多くの人が決して
「大きなことをしよう」としていたわけではないということです。
・まずはあいさつをしてみる。
・話を聴いてみる。
・地域の活動に誘ってみる。
・少しだけ相手のことを知ろうとしてみる。
そんな一つひとつの小さな行動でした。
でも、
その小さな一工夫こそが、
これからの利根町の未来に
つながっていくのではないかと思いました。
最後に見えたもの
全5回を終えてみると、
この講座は、当初想像していたよりも
ずいぶん「日本語支援」から離れた講座になりました(笑)。
でも、終わってみて思います。
やっぱり、大切なのはこちらだった。
日本語支援は、
日本語の形式や教え方だけを学ぶことではありません。
その人が、
どのような想いを持って相手と関わろうとするのか。
そして、
地域に暮らす人が、
新しく来た人を
どのような存在として受け止めるのか。
その土台がなければ、
どれだけ日本語を教える技術を身につけても、
人と人との関係は生まれません。
日本語は、形式だけではない。
人と関わろうとする気持ち。
そして、それを受け止める地域の姿勢。
それを育てることが、
日本語支援の入口なのかもしれません。
今回の講座で
参加者の皆さんと一緒に考えたことが、
これからそれぞれの生活の中で、
小さな行動につながっていくことを願っています。