日本語ゆめラボ

社会

「日本語を教える教室」という固定観念を越えて 26/09/06

笠間市つなぐ日本語教室の対面クラスが、
12回をもって終了しました。
 
 
教室を始める前、
私にはいくつかの課題意識がありました。
 
 
●日本語支援者養成講座を受講しても、
実際に外国人と関わる機会は少ないこと。
 
 
●日本語レベルが大きく異なる学習者に、
教師一人で対応することの難しさ。
 
 
そして、
 
●地域日本語教室だからこそ、
形式を学ぶだけではなく、
実際の生活につながる日本語を扱いたいということ。
 
 
これまで、
日本語支援者養成講座が
「学んで終わり」の教養講座になってしまっていることにも
疑問を感じていました。
 
 
そこで今回は、
市役所、
日本語教師、
地域住民が
一体となり、
外国人住民を支える教室を目指しました。
 
 
『はじめよう!
人とつながる生活の日本語』(アルク)を
 
使いながら、
ゴミ、防災、地域など、
暮らしに身近なテーマを扱いました。
 
 
しかし、
実際に教室を始めると、
私自身も考え続けることになりました。
 
 
サポーターの皆さんが
安心して活動できるように、
進め方や関わり方を丁寧に伝え、
教室を円滑に進める。
それが
日本語教師としての役割なのだろうか。
 
 
それとも、
私がすべてを整えるのではなく、
そこに集まった人たち自身が
関係をつくっていけるような場を
デザインすることもできるのではないか。
 
 
回を重ねるうちに、
教室では
少しずつ人と人との関係が生まれていきました。
 
 
そして最終回。
 
 
外国から笠間に来た学習者の皆さんが、
自分たちの暮らす「笠間」について
スピーチをしました。
 
 
「笠間が好きです」
 
 
外から来た人が、
自分たちの住む地域の魅力を見つけ、
好きだと言ってくれる。
 
 
その言葉を聞いて、
私たち自身も、
当たり前だと思っていた
地域の魅力や美しさに、
改めて気付かされます。
 
 
日本語を学ぶことが、
人を知ることにつながる。
 
人を知ることが、
地域を知ることにつながる。
 
 
そんな循環が生まれることも、
地域日本語教室の価値なのかもしれません。
 
 
日本語教師だからできること。
そして、私だから作れる価値とは何か。
 
 
笠間での12回は、
その答えを探し続ける時間となりました。

利根町で私たちは、何を学んだか 26/08/28

利根町で
全5回の日本語支援者養成講座を担当しました。
やさしい日本語や外国人との
コミュニケーションについて学んだ5回。
けれど、

振り返ってみると、参加者の皆さんと考えていたことは、

いつの間にか

「日本語の教え方」だけではなくなっていました。


外国人を受け入れるとは、どういうことなのか。
私たちは、どんな地域に住みたいのか。


そんなことを、皆さんと一緒に考えた5回でした。


第1回|まず、知る


最初は、外国人との共生について考えました。


「自分にとっての当たり前が、
相手にとっても当たり前とは限らない」


「まずは相手を知ることが大切」


そんな気づきが生まれました。


外国人を「支援する」前に、まず相手を知ろうとすること。


ここから始まりました。


第2回|伝えるより、聴く


やさしい日本語やコミュニケーションについて考えた回です。


「自分は伝えることばかり考えていた」


「相手の話を最後まで聴くことが大切」


そんな振り返りが印象に残りました。


日本語支援は、一方的に教えることではありません。


日本語を教える前に、まず人の話を聴く。


テーマは少しずつ、
「日本語の技術」から
「人との関わり方」へ広がっていきました。



第3回|助け合える地域


「自助・互助・共助・公助」を考える中で、

話題は外国人支援から、

利根町という地域そのものへ。


「困ったときに助け合える関係をつくりたい」


「外国人も含めて、人と人とのつながりを大切にしたい」


そんな声がありました。


「外国人のために何ができるか」から、


「私たちは、どんな地域に住みたいのか」へ。


問いが変わっていきました。



第4回|受け入れる地域を考える


町内会や地域との

つながりについて考えました。


外国人が増えることを

「対応しなければならない問題」として捉えるのではなく、


「この町に来て、住んでよかった」と
思える地域をどうつくるか。

そんな視点で話し合いました。


外国人との共生を考えることは、

外国人だけのためではありません。


高齢者も、子どもも、障害のある人も、

地域とのつながりが少ない人も。


誰もが暮らしやすい地域を

考えることにつながっています。



第5回|実際に会ってみる

最終回は、外国人ゲストとの交流。


それまで考えてきたことを、

実際のコミュニケーションの中で試しました。


最初は緊張していた参加者も、

同じテーブルを囲んで話すうちに、

少しずつ会話が生まれていきました。


振り返りには、


「まずはあいさつから始めたい」


「これから積極的に関わっていきたい」


「一緒に楽しみたい」


という声がありました。



「支援」という大きな言葉よりも、

あいさつをする、

話を聴く、

少し相手を知ろうとする。


そんな小さな行動が

多く語られていたことが印象的でした。


5回を終えて


振り返ってみると、
5回の講座には一つの流れがありました。


知る。
聴く。
助け合う。
地域を考える。
実際に関わる。



最初は「日本語をどう教えるか」を考える講座でした。


でも、終わってみると、
参加者の皆さんが考えていたのは、

もっと大きなことだったように思います。



外国人を受け入れることは、
行政や学校だけが考えることではない。


一人ひとりの小さな関わり方が、
地域の雰囲気をつくっていく。



そして、地域の未来をつくるのは、
そこに暮らす私たちなのかもしれません。
講師として


私は前年も、

利根町でこの講座を担当しました。


今回、皆さんの振り返りを一つひとつ

読みながら感じたのは、

誰も「大きなことをしよう」としていたわけではない、

ということでした。


まずは、あいさつをする。
話を聴いてみる。
少しだけ相手のことを知ってみる。


その小さな一歩。


それが、
これからの地域をつくっていくのかもしれません。



全5回を終えてみると、

この講座は、当初想像していたよりも

ずいぶん

「日本語支援」から離れた講座になりました(笑)。


でも、終わってみて思います。


やっぱり、大切なのはこちらだった。


日本語支援は、

日本語の形式や教え方だけを学ぶことではありません。



人と関わろうとする気持ち。

そして、それを受け止める地域の姿勢。

それを育てることが、日本語支援の入口なのかもしれません。

外国人が多いまちは、未来の日本かもしれない 26/08/25

常総市新規採用職員を対象に、
外国人住民対応について考える講座を担当しました。
 
 
常総市は、
茨城県内でも外国人住民の割合が高い地域の一つです。
 
 
窓口対応、行政情報、防災、子育て、福祉。
 
 
外国人住民が増える中で、
行政にはこれまでとは違った対応が求められています。
 
 
講座を担当しながら、私は二つのことを考えていました。
 
 
常総市は、これからの自治体の先行事例になる
 
外国人住民の割合が高い自治体では、
すでにさまざまな課題が見え始めています。
 
 
「言葉が通じない」
 
 
「制度を説明しても理解されない」
 
 
「必要な情報が届かない」
 
 
こうした課題を、
外国人住民が多いから起きる特別な問題として捉えることもできます。
 
 
でも私は、少し違う見方をしています。
 
 
これから日本全体で外国人住民が増えていくなら、
今、外国人住民の多い地域で起きていることは、
これから他の市町村でも起こるかもしれません。
 
 
そう考えると、
常総市のような地域は「課題が多い地域」ではなく、
 
 
これからの日本を先に経験している地域
 
 
なのではないでしょうか。
 
 
 
そこでどのような仕組みをつくるのか。
 
行政がどのように住民と関わるのか。
 
そこで生まれる実践は、
これから多くの自治体にとって参考になる可能性があります。
 
 
 
情報を届けることは、行政の責任
 
もう一つ、強く感じていることがあります。
 
それは、
 
情報を届けることは、行政の責任であるということです。
 
 
行政には、住民の生活に関わる多くの情報があります。
 
 
災害が起きたときの避難情報。
 
 
税金や保険の手続き。
 
 
子育てや福祉の制度。
 
 
健康に関する情報。
 
 
これらは、
「知りたい人だけが調べる情報」ではありません。
 
 
住民の安全や生活に直接関わる情報です。
 
 
日本語が十分に分からないから情報が届かない。
 
 
制度を知らなかったから必要な支援を受けられなかった。
 
 
情報は生活の質に関わります。
 
 
 
だからこそ行政には、
 
「伝えた」だけではなく、
「届いたか」を考える責任がある
 
のではないでしょうか。
 
 
「外国人は○○だから」という思い込み
 
 
では、なぜ情報発信が十分に進まないのでしょうか。
 
 
そこには、私たち自身の無意識の決めつけがあるのかもしれません。
 
 
「外国人は日本語が分からないから」
 
 
「外国人は制度に関心がないから」
 
 
「外国人はホームページを見ないから」
 
 
「外国人はルールを守らないから」
 
 
こうした言葉を聞いたことがあります。
 
 
 
でも、「外国人」と一括りにしたとき、
私たちは一人ひとりを見なくなります。
 
 
日本語がよくできる人もいる。
 
 
日本で長く暮らしている人もいる。
 
 
スマートフォンを使って
積極的に情報を集めている人もいる。
 
 
子どものために地域の情報を必死に探している人もいる。
 
 
困っていても、どこに相談すればいいのか分からない人もいる。
 
 
 
「外国人だから」ではなく、
 
その人に、今、どんな情報が必要なのか。
 
そう考えることから、
情報発信は始まるのではないでしょうか。
 
 
 
伝える側が変わる
 
「外国人住民が増えたから、多言語対応をする」
 
もちろん、それも大切です。
 
でも、本当に必要なのは、
言語を増やすことだけではないと思います。
 
 
情報を短くする。
 
 
分かりやすくする。
 
 
図やイラストを使う。
 
 
必要な人に届く方法を考える。
 
 
 
そして何より、
 
「住民が理解できなかった」のではなく、
「行政の伝え方は十分だったのか」
 
と考えてみる。
 
 
 
外国人住民のために
特別な対応をするということではありません。
 
誰にとっても分かりやすい行政へ変わっていくこと。
 
それが、外国人住民が増える社会に
求められているのだと思います。
 
 
 
外国人が多い地域は、未来を先に歩いている。
 
そこで起きている課題を
「特殊な問題」として切り離すのではなく、
これから自分たちの地域にも起こることとして考える。
 
 
そして、「外国人にどう適応してもらうか」だけではなく、
 
 
行政は、すべての住民にどう情報を届けるのか。
 
 
そんな問いを、
これからも地域の人たちと一緒に考えていきたいと思います。

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